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イライラ

 S市のOさんは、四十二歳の女性です。小学生の子どもは言う事を聞かないし、パート先の上司はいい加減だし、同僚には気の合わない人がいて陰口を叩くし、夫は家事を一切手伝わないし、イライラすることばかりです。特に生理前になると、上半身に汗をかいて自分でも驚くくらい気分のコントロールが出来なくなってしまいます。先日は、ご主人に手を挙げる寸前で、お皿を数枚窓からベランダに投げてから、ハッと気が付く始末です。

 舌を見せてもらうと、舌の先が赤いので、中国漢方でいう五臓六腑の「心(しん)に火が入っている」状態でした。普段から加味逍遥散(かみしょうようさん)を飲んでもらって、危なそうな時期には黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を頓服的に飲んでもらいました。

 薬を飲み始めて、一番変わったのは子どもたちです。なんとなく、怒られたくないからか距離を置いていたのが、学校での出来事をいうようになりました。もちろん、プリントや成績のあまり良くないテストの結果も隠さずに見せるようになりました。その変化に気が付いたOさんは、自分がいつも怒っていたのが良くなかったと、子どもに教えられたと言っていました。

 中国漢方では、イライラ怒りやすいのは、五臓六腑の肝の問題だと考えます。寝つきが悪かったり、眠りが浅い場合は、柴胡加龍骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)を勧めます。舌に白い苔が厚く付いて便秘傾向の場合は、大柴胡湯(だいさいことう)を勧めます。舌に白い苔が付いていて頭痛を伴う場合は、釣藤散(ちょうとうさん)を勧めます。舌にあまり苔が付いていなくて、特に左の肩こりが強い場合には、抑肝散(よっかんさん)を勧めます。

 自分がのびのびする時間が少ないことも考えられます。庭の草花に水をやりながら話しかけても、草花から癒されるものです。機会を見つけて森林公園のなかを散策してみましょう。プ-ルで泳いだりするのも、気晴らしのひとつです。自分に合ったワクワクする時間を楽しんでください。気功やヨガで深い呼吸の中で、ものごとに執着せず、離れたところから自分を観察する習慣を身に付けるのもひとつの方法です。


「便秘」

 便秘を治すには、生活習慣を直すことが何より大切です。まず夕食を軽めにして夜は十一時前には寝ます。その分早く起きて、水分を補充してから散歩などを一時間楽しみます。納豆やヒジキ・根菜などを朝ご飯で食べて、トイレに座る時間を確保します。これで治らないときにはじめて薬による治療を考えるべきです。

 現代医学の薬の中には、薬草成分が含まれているとされているものが多いです。ところが、その成分はセンナなどのかなり強い薬草が使われています。センナは続けて服用していると、シワができるようなやせ方をします。体が冷えて疲れやすくなります。また、浣腸も繰返し使うと腸が緩んで習慣化してしまうという説もあります。

 中国医学では、急性の場合には気の滞りによる場合が多く、慢性の場合気の不足や血の不足による場合が多いと考えています。

 旅行などの時に生活が不規則になって便秘したり、朝忙しくてトイレに落ち着いて座れないと便秘してしまう場合があります。便が硬く強くいきまないと出ません。ストレスが強くて舌の赤みが強くて白い苔が少し厚めに付いている場合に、大柴胡湯(だいさいことう)を勧めます。舌の苔が薄い場合は大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)を勧めます。

 疲れやすく息切れしやすい人で固さは普通なのに、かなりいきまないと出ずに汗をかいて舌の引き締まり方がよわい場合は、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を勧めます。

 喉が渇きやすく、髪が細かったり肌が乾きやすく舌の赤みが薄くコロコロのウサギのフンのような便が出る場合は、首烏延寿片(しゅうえんじゅへん)を勧めます。入手しにくい場合は麻子仁丸(ましにがん)四物湯(しもつとう)で代用します。同じように喉が渇きやすく、手足がほてり舌の赤みが強くてコロコロのジャガイモのような便が出る場合は、瀉火補腎丸(しゃかほじんがん)を勧めます。

 私は、白衣を着て仕事をする他に、土や草をいじる時間も大切にしています。ケツメイシは、昔から便秘や目の熱感に使われる民間茶です。マメ科の植物で、私の畑でもたくさん収穫できます。みなさんもよかったら、空いている土地で殖やしてみませんか?


PMS(月経前症候群)

 春が近づいてくると、ウキウキしてきます。中国医学では、五臓六腑の考え方に対して、春夏秋冬に長夏を加えて五季というイメージを持っています。ちょうど、春は伸び伸びと草木が芽吹く時期なので、肝の気が伸びやかさを好むところから、肝は春に属すると考えています。

 ところが、日本の春は、進級・卒業・進学・就職など大きな環境の変化の季節でもあります。時には不安や緊張にとらわれて憂うつになる場合もあります。特に生理の前は気分が不安定になるばかりでなく、フキデモノや便秘に悩んでいる方も多いと思います。

 まず、漢方の立場から考えると、PMSの原因として気をつけて欲しいことは、冷えです。最近は、わざと股上(またがみ)の短いパンツを履く人が増えています。かがむ前から腰が出て立っていてもおへそが見えています。薬に頼る前にこれをやめる必要があります。

 また、職場では椅子に座りきりで移動は車。これでは、腹筋を使うチャンスは無く、腹腔内の血行もよどんでしまいます。治したいなら、一時間は散歩をしてください。タマネギ・ニラ・ラッキョウの他、ヒジキやワカメ・コンブなどを煮て食べましょう。

 生理前に、イライラや胸が張って肩がこったり頭痛がある場合は、肝の気が滞っています。舌の先が赤い場合には「加味逍遥散」を、舌全体の赤みが強い場合には「抑肝散」を勧めます。便秘をする場合はその時期だけ薬を飲みます。舌の色が赤紫色なら「通導散」を、青紫色なら「大黄牡丹皮湯」を勧めます。生理になると下痢してしまう場合には、そのときに「啓脾湯」を勧めます。

 生理前に眠気やだるさで困っている人もいます。舌の引き締まり方が弱い場合が多く、「補中益気湯」が第一選択です。おりもののような出血が生理の前にある場合は、「帰脾湯」を重ねます。生理が一週間以上続く場合は、「芎帰膠艾湯」を中国では使います。

 A市のMさんは、加味逍遥散を続けて飲んでいました。いらいらは落ち着きましたが、何をするにもおっくうな気持ちが何とかならないかと、相談においでになりました。舌の引き締まり方が弱かったので、帰脾湯を勧めました。3か月合わせて飲むことによって、気持ちが前向きになったようです。

 いずれにしても、信頼のおける経験豊かな医療専門家に相談してください。


手足の冷え

 バレンタインデーで、手を握り合ったカップルには、手足の冷えは無縁かもしれませんが、そういう相手がいないと心まで寂しくなってしまいますね。

 患者さんの中には、「こおりんぼぉ」になったような指先の人もいますし、足先がしもやけになってしまう人もいます。

 漢方では、体の芯が冷える場合には、五臓六腑の腎臓を温める力が足りないといって、シナモンを勧めます。無毒化したトリカブトを使って頻尿を改善する漢方薬が、八味地黄丸(はちみじおうがん)です。不思議なことに、この薬は頻尿ばかりでなく尿量減少にも効果があるといわれています。これは、漢方がバランスを整える医療だからです。

 夏には足がほてるのに、冬には汗をかいて冷えてしまう場合には、夏には六味丸を冬には八味地黄丸を勧めます。こういう人がしもやけになるので、いつも乾かすように気を付けて下さい。

 手が冷える場合、日本では当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などを勧めます。利尿効果もあって、ダイエットを助ける効果や水肥りによる冷えが原因の生理痛を和らげる効果も期待できます。中国では、芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)を勧めます。血液循環を改善する働きがあるので、生理の血の中に3センチもあるような塊りがあって色が黒く粘る場合の生理痛を和らげる効果も期待できます。

 関節が冷えて痛いときには、大防風湯(だいぼうふうとう)を勧めます。四肢の冷えの他、むくみもある場合、真武湯(しんぶとう)を勧めます。ストレスからの四肢の冷えには四逆散(しぎゃくさん)を使い、体力低下からの四肢の冷えには四逆湯(しぎゃくとう)を使います。

 冷えを改善する食べ物の第一は、羊の肉です。最近、前橋にラム料理ジンギスカンのステキなお店を発見しました。馬のさしみをニンニクのしょうゆで食べたり、鹿や牛のシチューを食べると、体は火照ります。でも、恋人がいないと冷えているほうがマシかもしれませんね。


肌荒れ

※今回より群馬読売ダイジェストからあみーごへ掲載が変更となりました。

 みなさん、なにが怖いって、肌荒れほど怖いものはないですよね。ファッションもヘアーもバッチリ決まっているのに、全然肌の調子が悪いと出かける気もしなくなっちゃうよね。仲良しのともだちの肌がピチピチの赤ちゃんみたいな肌だったりすると、そばに来ないでって言いたくなっちゃう。そんな人たちに先生が、秘密の方法を教えよう!

 まず第一に、睡眠不足はお肌の大敵って言葉は知ってるよね。夜更かしして起きた朝は鏡を見るのが怖いよね。今晩からぜひ十時半には寝よう。皮膚の新陳代謝が順調に進んで、翌朝には、肌のカサカサもポツポツもずいぶんおさまっているはずだ。同じ七時間寝るのでも、午前一時に寝て八時に起きるより、十一時前に寝るのがポイントだ。

 第二に、便通を整えよう。便秘すればフキデモノはあちこちにポツポツ。下痢をすれば、肌はカサカサ。冷たい飲みものを避けて、温かいほうじ茶が一番胃腸に優しい。揚げ物を減らして、根菜類の煮ものを食べて腸のデトックスをしよう。日本人のおなかには納豆のような風土から生まれた発酵食が適している。

 第三に、運動しよう。肌は内臓の鏡という言葉を知っているかな?内蔵が健康でないのに、肌だけ健康になるわけには行かない。内臓が元気なら、肌も元気っていう意味だ。内臓を元気にするにはストレッチの後、散歩や水泳が一番。毎日できなければ、学校や職場で遠回りして別の階のトイレまで階段を使うのも、イイかもしれない。

 漢方では、舌の引き締まり方が弱く、表面が白く汚れているとき「六君子湯(りっくんしとう)」を勧める。下痢が治って肌がツヤツヤになる。便秘で、ポツポツに悩んでいる人には、「潤腸湯(じゅんちょうとう)」で便秘を治して「排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)」でポツポツを治そう。近所で信頼できる漢方の専門家に相談しよう。

 もちろん、洗顔には香料などを含まない純正せっけんでダブル洗顔・しっかりせっけん分を落とそう。

 でも、なにより大切なのは、恋をすること。恋をすると、ホルモンバランスがとれて、あっと言う間にきれいになっちゃいます。健闘を祈るっ!


うつ

 冒頭から暗い話で申し訳ありませんが、日本で一年に自殺する人の数は、三万人を超えています。この日本で、実に2時間に7人の人が生を断念しています。自殺の原因はいろいろあると思います。私の考えでは、生きたいと思っていてもあまりに生きにくい状況に追い込まれて、死を選ばざるを得ない心理状況になってしまうのだろうと思います。それは、感情の問題なので、人格とは全く関係の無いものです。私の気持ちとしては、それを回避するテクニックを持ち合わせていなかっただけなのだろうと思いたいです。

 漢方では、五臓六腑の肝(かん)・心(しん)・腎(じん)に大きく関わります。は、もともとのびやかにあるはずのものですが、やりたくないことばかりさせられたりすることで、鬱積してしまいます。イライラして他人に当たることで解消するタイプの人が、多いようです。気分がすっきりせずモヤモヤします。保険範囲では加味逍遥散が良く使われますが、ベテランの専門家は抑肝散香蘇散などを応用しているケースをよく見ます。

 に問題が出やすいのは、もともと繊細な神経の持ち主が、あの時こうすればよかった・こんどこう言われたらどうしようなどと神経を使いすぎて、精神疲労を起こしたときです。元気が出ずに気力が低下します。食欲が無くなり、泥のような便が一日に数回出ることもあります。眠りも浅く、とりとめの無い夢を多く見ます。第一選択は帰脾湯です。ものごとのとらえ方にゆがみがあるので、こころを開けるカウンセラーさんに相談するのが良いでしょう。

 に問題が出るのは、急に驚くことに遭遇した場合にみられます。大切な家族が事故にあったりしたときに、ショック状態になる場合があります。また、がんの告知(あまり良い言葉ではありませんが)を受けたときなど、自宅にどのように帰ったのか分からないなどというケースもあります。人の話が頭に入らない、腰が抜けたように何もやる気が出ないなどもみられます。保険範囲ではお勧めできる処方を私は知りません。中国漢方では参馬補腎丸至宝三鞭丸などがあります。

 気持ちのエネルギーが下がっているような気がしたら、睡眠時間を増やしたり、気のおけない友人とお日様を背中に感じ温かい飲み物を飲みながらのんびりおしゃべりを楽しむのも良いでしょう。日帰り温泉でまったりするもの良いでしょう。笑える映画やマンガを一人楽しむのも有効だという説もあります。

 自殺は残された人たちに大きな傷を残します。自殺以外の道を探して欲しいと思います。

キーワードは、温泉とおしゃべりです。


花粉症(アレルギー性鼻炎)

 地球温暖化のせいか、気温が下がらず秋の花粉が終わらないうちに、春の花粉の気配を感じている人もいるようです。最近は、花粉症の予防のために、漢方薬を秋の終わりから飲まれる人が増えました。予防することで、症状を軽く感じる患者さんが増えているようです。

 多くの人が2月の初めから、鼻水などの症状がだんだん強く現れますが、「冬の病気は夏治す」という言葉があるように、花粉症予防はもう既にスタートが切られています。今年の夏は酷暑のためにどうしてもクーラーに頼らざるを得ない状態でした。汗をかいて、体表の気が弛んでいる状態で冷たい風を受けると、冷えが体の中に侵入してしまいます。空調設備の整った環境に長くいると、外界の温度差に対して体温を調節する能力が低下して、クシャミや鼻水が出やすくなります

 過敏な状態で炎症が発生すると目の痒みや喉の痛みから頭痛・発熱のほか、ゼンソク・皮膚炎なども起こします。

 体質改善にとって一番大切なことは、日本の伝統的な飲食を心がけることです。飲み物はあたたかいほうじ茶がお勧めです。食べ物は、分つき米を季節の葉モノのみそ汁や根菜類の煮ものでいただきましょう。山芋やもち米を少し多めに食べるのも良いでしょう。命を支えてくれる食べ物に感謝して、ゆっくり噛んで食べましょう。

 運動するときはやや薄着にして、休むときは暖かくしてやわらぎましょう。

 予防としては、体表を守る「気」を高めるために黄耆(おうぎ)を含んだ玉屏風散(ぎょくへいふうさん)が第一選択です。日本には衛益顆粒(えいえきかりゅう)という名前で輸入されています。免疫の異常を直接安定させると考えて良いでしょう。

 何年も繰り返している場合は、漢方でいう「腎(じん)」まで影響が及んでいると考えます。免疫を安定させる力が弱まっていると考えて、参茸丸(さんじょうがん)が第一選択です。食べ物では、黒ゴマや黒豆のほか、煮干やかつお節・鶏の手羽先などでしっかりだしを取ったみそ汁やスープを飲みましょう

 もちろん、夜更かし朝寝坊は、健康にも地球にも良くありません。生活の中から化学物質過敏症の原因になるようなものを減らしてゆきましょう。

 A市のNさんは、27歳の女性です。花粉症の他にアトピー性皮膚炎とゼンソクで悩んでいます。衛益顆粒を半年続けて、驚くほど安定しました。

 キーワードは、体温調節能力の鍛錬です。


冷え症

 ひとくちに冷え症といっても、ざまざまなタイプがあります。ここでは四つに分けて説明しましょう。

 まず、手足の先が冷えるタイプです。お風呂に入っても寝る前に冷たくなってしまうので、夜は靴下をはかないと眠れないなど、困ってしまいます。これは、体の中心の暖かみを体のすみずみまで届ける力が弱いのです。日常生活の心がけは、お風呂に入るときにひなた水をかぶりお湯に入る。お風呂から出るときには、冷たい水をふくらはぎに左右5秒ずつかけてから出るのが良いといわれています。漢方薬では、気血を補う「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」「参馬補腎丸(じんばほじんがん)」を勧めます。

 次に、体の表面がゾクゾク寒気を感じるタイプです。暖かい部屋から寒い外に出たときに、耐え難い寒さを感じるので、マスクをしたりマフラーを巻いたりします。これは、体表を守る衛気(えき)=バリアーが弱いのです。日常生活の心がけは、もち米やヤマイモを心がけて食べると良いでしょう。漢方薬では、衛気を養う「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」が勧められます。風邪をひきやすかったり花粉症がある人は、「衛益(えいえき)顆粒」が勧められます。

 次に、下半身・特に腰が冷えるタイプです。下半身が浮腫んだり腰が痛くなる場合もあり、時には不妊症を伴う場合もあります。これは、漢方でいう腎(じん)の力が弱いのです。日常生活の心がけとしては、黒ゴマや安心して食べられる鶏モツを心がけて食べると良いでしょう。漢方薬では、「至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)」「双料参茸丸(そうりょうさんじょうがん)」を勧めます。

 最後に、おへその下が冷えるタイプです。体全体はなんとも無いのにさわると下腹だけ冷たいので、いつもカイロを貼らないではいられません。漢方では、血(けつ)の質が良くなくて、循環が良くない状態です。女性の場合、経血の中にかたまりがあったり、生理痛が激しいケースもあります。日常生活の心がけとしては、おへその上まで来る下着をしっかりと身に付けることです。漢方では、■帰調血飲(きゅうきちょうけついん)「参茸補血丸(さんじょうほけつがん)」を勧めます。

 キーワードはふくらはぎに冷水をかけることです。

→草冠+弓


不妊

 愛知県に吉村医院という産院があります。そこでは、出産をひかえた妊婦が、薪(まき)割りから、雑巾がけなど共同生活の場が展開されているそうです。最近の高級ホテル並みの豪華な病室で、家族と一緒にフランス料理に舌づつみを打つ出産とは、まったく違う光景が映し出されています。

 妊娠も同じことで、すぐそこの八百屋に行くにも自家用車で行き、荷物を持って歩くことも無く、四つんばいになっての雑巾がけをしなくなってから、お腹の血の巡りが悪くなって、妊娠しにくいのだという説さえあります。

 現代医学では、不妊の原因が女性にある場合、それに対して、外からホルモン剤などを使って操作して行くのが第一段階の治療で、最近は高度医療として人工授精や体外受精を選択してゆく話しも聞きます。

 漢方では、腎精が足りない・気の流れが滞っている・血(けつ)が足りない、などといって、体質を整える薬を選んでいきます。不妊という現象を、人間が開発した技術で乗り越えてゆく道が現代医学なら、漢方では、患者さんが妊娠する準備が整っていない体質のゆがみをただしてゆく道だと思います。

 基礎体温で、高温期にスッキリ体温が上昇せずに舌の引き締まり方が足りない場合には、腎陽が足りないとして「双料参茸丸(そうりょうさんじょうがん)」を高温期に服用することを勧めます。この薬は、体外受精などのときに、卵の数が足りないとかグレードが低い場合にも効果を発揮します。体外受精は、精神的にも肉体的にも経済的にも大きな負担のある治療法といわれています。なるべくチャレンジの回数を減らせるように、漢方の角度から準備を整えることは患者さんの負担を軽くする大切なステップとも言えるでしょう。

 また、ストレスの解消もなかなか難しい社会になっています。収入のいい男性と結婚するために親の言うように育って、失敗を回避し、回りの都合に自分の意見を曲げてしまい、観念的に物事をとらえる女性が増えているように思います。そういう患者さんに限って、書店に並ぶ不妊の素人向けの本にある、漢方薬の紹介の記事にこだわって、「何年飲んでも効果が無い」と道をふさいでしまいます。近所の評判の良い漢方の専門家に相談することを勧めます。

キーワードは、雑巾がけです。

便秘

 「毎日、スッキリするのがこんなに気持ちがいいとは、思いもしませんでした。」なかなか、自分のお腹の具合に合った便秘薬にめぐり合わなかったNさんが言いました。26歳のキャリアウーマンです。仕事がおもしろくがんばっているうちに、夜遅くまで仕事をするようになり、いつしか「夕食」が夕方でなく夜遅く食べる「夜食」になってしまっていました。

 「3日出なくてもそんなに苦しくない代わりに、下腹がポッコリ出て、いつもお腹を隠すようなデザインの服を選ぶようになってしまいました。便秘が治ってから、お腹がすっきりして、胃のあたりがいつもモヤモヤしていたのもすっかり治りました。あごや首筋・額にできていた吹き出物も無くなりました。」

 食べる・寝る・排泄する、これらは、動物としての基本的な生活習慣です。これらが順調に行って初めて健康が保たれます。夜八時を回ったら、しっかりした食事は摂らずに、みそ汁やお粥程度にしましょう。寝るときに胃が空っぽになっているように調節しましょう。夜は11時前には寝るようにしましょう。朝は食事の一時間前には起きて、水分を摂ってから、散歩をしてください。

 食べ物は、日本人が昔から食べていた、ご飯とみそ汁と漬物を基本にしましょう。そこに、一日一回はワカメ・ヒジキ・コンブといった海藻類やダイコン・ニンジン・ゴボウといった根菜類を忘れずに摂りましょう。

 その上で、まだ便秘があれば漢方薬を考えましょう。初めからセンナや大黄などの刺激の強いものを選ばずに、何首烏(かしゅう)や麻子仁(ましにん)や決明子(けつめいし)などで調節するようにしたいものです。また、ストレス要素の強い便秘には、潤腸湯(じゅんちょうとう)などもお勧めできます。

 また、冷えが強かったり、舌や唇の赤みが足りない場合は、漢方でいう「血」を増やす処方の四物湯(しもつとう)なども、頼り癖のつかない漢方薬です。

 さらに、疲れやすく、いきむと汗が出たり息切れが起きる、舌の引き締まり方の足りない場合は、漢方でいう「気」を助ける補中益気湯(ほちゅうえっきとう)もお勧めです。

 便秘は、美容ばかりか大腸がんの原因のひとつにも数えられています。
 キーワードは、海藻類です。


胃腸虚弱

 今年の夏は長い梅雨の後にやってきたので、例年より胃腸を壊している人が多いようです。これは自然界の異変が自然の一部である人体にはっきりと影響が出ることを示しています。長い雨で畑が水浸しになりました。曇りの日が続いて太陽の光が足りなくて、作物の生長が遅かったです。

 中国漢方では、陰陽や五臓の考え方から人体も自然の一部と考えます。胃腸の働きを「脾」といって、自然界を五つの要素(木・火・土・金・水)に分けて考えると、「脾」は「土」に相当して、適度に日が当たり乾いている必要があります。

 ところが、現代の生活はその自然とまったく逆の生活になってしまっています。長い雨に相当するのが、冷たい甘い飲み物です。特に最近は熱中症に対する警戒の情報に偏り、水を少しずつ飲むのが良いとされています。しかし、漢方の立場からすると、水分摂取は、食後に一杯の温かい麦茶を飲む程度が良いと考えています。普通の都市生活をする人は、それ以外の時はむやみに水分を摂らずに胃を干すようにしないと、かえって水肥りで体力の無い身体になってしまいます。氷の浮いている飲み物やシャーベットやアイスクリームは、早朝二時間歩いた人が、木陰で昼寝の時に摂取するならかまいません。

 太陽の光が足りない状態に相当するのが、エアコンによる冷えです。現代医学でも、体温が安定していないと消化酵素が働けないといわれています。口から食べ物が入っても栄養素が吸収できなければ、体力はどんどん落ちていきます。疲れやすかったり・治りにくい皮膚病になったり・ゼンソクやアレルギー性鼻炎を治せない体質になります。極端に言えば、二型の糖尿病や高脂血症やがんなどが克服できないのは、胃腸が必要なものを吸収できず、不必要なものを排泄できない弱さが根本にあるといっても過言ではないでしょう。

 日本の夏の胃腸虚弱に対する基本処方は「香砂六君子湯(こうさりっくんしとう)」です。舌がむくんでいるようにゆるんで、場合によっては舌の縁に歯の跡が波打っています。表面に白い苔と呼ばれるヌルヌルがついています。食欲不振からだるさまで対応できます。まれに、下痢が続くと舌の表面が乾く場合があります。そのときは「参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)」を勧めます。日本には星火健脾散(せいかけんひさん)という名前で輸入されています。


アトピー

 「先生、漢方薬を飲む前に撮った写真を見たら、思ったより良くなっているので、続けていきたいと思います。友達からも良くなったと言われるし・・」

Mさんは、24歳の男性です。高校生になるまでは、たいしたことがなかったアトピーも、何とかしようとすればするほど悪化してしまい、学校にも行きにくくなってしまいました。考え方も後ろ向きになって「どうせ何をしても同じだから」と引きこもるようになりました。

 わずかな信頼できる人の一人から、漢方薬を勧められて飲むようになりました。あまり美味しくない粉の薬を一ヶ月飲むと、いくらか良いようだけれど治らない。「治らないんですか?」と言うMさんに「長く炎症を起こしてきたから、そんな短い期間では治りきりにはなりませんよ。でも、大きな波と小さな波を繰り返しながらだんだん良くなっていくと思いますよ。希望を持って続けましょう。初めて来た時を百とすると今八十くらいには落ち着いてきたでしょう?」と説明しました。

 漢方からみた、アトピー性皮膚炎の根本治療に必要な注意点は、免疫の安定です。食事と排便と睡眠と情緒の安定から免疫の安定は得られます。食事は規則正しい時間に食べましょう。よく噛んで楽しい会話をしながら食べましょう。東京オリンピック以前に食べられていたものを食べましょう。(ご飯とみそ汁と漬物が基本です。)排便は決まった時間に気持ちよく出るように余裕を持った時間に起きて、朝ごはん前に水分をとって散歩が出来ると良いです。夜は十一時前には寝ましょう。楽しいことをやって、アトピーがあるから何も出来ないというマイナスの考え方から、今日を喜びと感謝の日に変えましょう。

 そして、漢方薬を始めたからといって、これまで皮膚科のお医者さんから出されてきた薬を急にやめないでください。症状が良くなれば皮膚科の先生が診て、薬をどんどん弱い方に変えてくれます。自己判断をしないようにしましょう。

 ところが、炎症を抑えるには、私の考えでは、日本の漢方薬にはこれまで決定打の薬がありませんでした。最近、開発された「涼血清営顆粒(りょうけつせいえいかりゅう)」は、ベースとして肌が乾き舌の苔が厚くない時にお勧めできるお薬です。ジクジクがあり舌の苔が黄色やベトツキがある時は、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」を勧めます。

 キーワードは、免疫の安定です。


水虫

 「先生!先生は治るはずがないといっていたけど、うちのばあちゃんの爪水虫、治ったよ」赤城のふもとに暮らすAさんが、やってきて言いました。考えてみると、もう、一年半前に、土槿皮酊(ドキンピチンキ)を渡したときに、「目薬と決して間違えないように」と「かかととか指の間は続けていれば治るはずだけど、爪に入ったのは常識的に考えて治るとは思えない」と言った記憶はあります。しかし、実際に爪白癬が治ったのを見ると、目の前が広がる気がしました。

 爪に水虫が入って、皮膚科の専門医から内服薬を出されても、足なら一年・手なら半年、続けているうちに、肝臓機能に問題が出て中止する患者さんがいます。漢方薬を試して有意義なケースもあるとわかりました。

 「先生!草津温泉の足湯に一ヶ月入ると、水虫が治るっていいますよね。お酢に漬けて悪くする人もいるので、サリチル酸の入っている華陀膏(かだこう)を刷り込んでいたら、硬く厚くなって困っていたかかとが治ってくれました」セールスの仕事で一日靴を履き続けるTさんが言いました。中国の華陀膏、おそるべし・・。

 「先生!化学的な方法より物理的な方法のほうが、安全ですよ。中国の棒灸の熱で真菌を乾かして指の間の水虫から、爪の水虫も治っていますよ。ただし、煙いのが難点だけどね」いろいろな人が教えてくれます。

 「先生!狭い部屋で、インフルエンザにかかった人がクシャミをしても、インフルエンザにかかる人とかからない人がいますよね。同じ浴室の足拭きマットを使っても、水虫が感染する人と感染しない人がいるでしょう?身体の中に余計な水のよどみがある人は、皮膚の防衛力が低下してしまうから、水虫が感染しやすいんですよ。余計な水のよどみを発生させないためには、欧米食ではなく日本の伝統食を食べるのが良いんです。足をいつも清潔に乾かして、炒ったハトムギを煎じて飲む。夏は熱い麦茶を飲むのが一番ですよ。」

 患者さんからいろいろ教えてもらえます。どちらが先生かわかりません。
 キーワードは、清潔です。


めまい

 「めまいは気持ち悪いですよ。めまい癖がはじまってから、いつめまいが来るか心配で気分も沈みがちです。」60歳代の女性です。息子さんも結婚して、やれやれこれから孫の面倒を見る生活かなと思った頃に、めまいが始まりました。「めまいがしているのかどうか、自分の身体の様子をみると、なんだかめまいが始まるような気さえします」「外から見て何の変化もしないので、家族から理解されなくて辛くなります」いろいろな訴えがあります。

 なかなかうまく治らないめまいの場合、漢方もひとつの選択肢として期待できる部分だと思います。漢方でめまいの多くは水のよどみを考えますので、冷たい水の飲みすぎや動物の脂を含んだ食べ物を減らしてみるだけで良くなるケースも経験しています。

 中国では、患者さんの体質を実と虚に分けます。実は、気血水のよどみ、流れがスムーズでない場合に、激しい症状をともなって起きるのが特徴です。気の流れが悪い場合(現代医学的には自律神経失調症にあてはまるかと思いますが)にはいくつか傾向があります。ストレスがらまりで舌が紅い場合、抑肝散(よくかんさん)を使います。同じ心理的な要素が強くても舌の苔が白い場合には釣藤散(ちょうとうさん)を使います。

 イライラしやすく、頭が張るような場合には柴胡加龍骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)を使います。血の流れが悪いのは(現代医学的には脳血流障害に当たるかと思いますが)舌の色が暗い紅だったり舌に暗いシミがあったり舌の裏側の血管が怒張していたりします。頭痛を伴うのが特徴です。冠元顆粒をお勧めします。

 水のよどみが原因の場合、舌に苔が付きます。白い苔の場合、日本でよく使われるのは、初めの抑肝散に胃腸の薬草を加えた抑肝散加半夏陳皮(ようかんさんかはんげちんぴ)ですが、吐き気が強い場合は中国では半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)が第一選択です。黄色い苔でイライラが強い場合は竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)を、同じ黄色い苔の場合でも吐き気が強ければ茵■五苓散(いんちんごれいさん)を勧めます。

 虚の場合、上半身がユラユラ揺れて普段から食欲が少ない場合は、脾の気虚として補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を勧めます。下半身に力が無く地面が揺れるような気がしたり頭の空虚感がある場合は、腎の精が不足しているとして参馬補腎丸(じんばひじんがん)を勧めます。

 めまいは、脳や耳の原因も考えられますので、まずは専門医に受診してから、漢方を考えるので良いかと思います。

 キーワードは、冷たい水の飲みすぎです。

■→草冠に陳


顔面神経麻痺

 「旦那の顔が片方ダラーンって下がっちゃったんだけど、なんとかしてくれない?」更年期障害でかかっている患者さんから電話がありました。見てみるとハンサムな主人の顔がゆがんでしまっています。ホームドクターからは、顔面神経麻痺と診断されて、内服薬も出ていますが、内容が気休めのようだから心配になったというのです。

 中国では、まず鍼灸科に回されます。鍼灸治療無しにはこの病気の治療は考えられません。鍼灸は、体表にある反応点であるツボを刺激することによって、「気」の流れを整えて病気を予防・治療する中国伝統の治療法です。まだまだ、現代医学では解明されていない不思議な効果があります。針治療は交通事故のむち打ち症などにも驚くような効果があります。

 漢方薬の方面では、大きく三つのパターンに分けて考えます。まず第一に、身体が疲れているところに、急に冷えた風や雨に当たってなる場合です。患者さんの舌の色は赤みが薄く引き締まり方が足りなくて、場合によっては舌の縁に歯の跡が波打ってついています。身体がだるく疲れやすいです。麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)が勧められます。中国では煎じ薬に蜈蚣(ごしょう)といって、干したオオムカデを加えます。

 つぎは、中耳炎・耳下腺炎、ヘルペスなどのウイルス感染で熱が出て痛みが出る場合です。舌の色は赤みが強く舌の苔は黄色くて厚い場合が多いです。日本では、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を合わせて使いますが、中国では、先ほどのムカデのほかに、白橿蚕(びゃっきょうさん)といってカイコが白くなって死んだものもせんじ薬に入れると更に効果があるとされています。

 最後に、治療の時期を逸して(中国では3ヶ月を越して)しまった場合に、麻痺や痛みや違和感が残ります。舌は暗い紫になります。日本では疎経活血湯(そけいかっけつとう)川◆茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)を組み合わせますが、中国では、さきほどの、ムカデとカイコの他に全蝎(ぜんかつ)といってサソリの干したものをせんじ薬に入れます。

 始めの患者さんには、針治療に合わせて、麻黄附子細辛湯を飲んでいただきました。治療が早かったからか、1ヶ月ほどで心配した顔のゆがみはおさまり、違和感もなくなりました交通事故のむち打ち症も。

 キーワードは、早期治療です。

◆→草冠+弓 (日本語の標準パッチに入っていない字です。)


不眠

 「俺の決済で、1億とか金が動いちゃうんだよ。いつも、気が抜けなくて、それで、うつになっちゃったんかなあ・・」同級生のF君がやってきて、つぶやきました。大きな会社に入って、出世がしらと思われていた彼の病気は他人事ではありません。「いろんな睡眠薬を試してみたけど、眠れないんだ・・」

 舌の色は淡い紅で大きさは引き締まり方が足りません。話しの状態から精神疲労によるものと判断して「眠らせる薬じゃないから時間はかかるけど眠れる力をつける薬だから」と帰脾湯(きひとう)を勧めました。顔を合わせるたびに「眠れない。全然、効果が出ないよ」とつぶやいていた彼が、3か月目を迎える頃に、「なんだかすこし眠れるようになった」と不思議そうに言いました。

 漢方では、に分けて考えます。実を取り除いてから虚を補います。実には、気と水の流れの滞りの原因があります。気の流れが悪いと舌が硬く見えます。肩がこったり頭が痛くなりイライラしやすい人が多いです。よく使われる処方は抑肝散(よくかんさん)です。水のよどみがある場合には、舌の苔が厚く付きます。口臭も気になるので、舌の表面をこする人も多いようです。体が重だるく気分も憂うつです。竹■温胆湯(ちくじょうんたんとう)をまず使うのをお勧めします。

 虚の場合には、気と血と陰の不足が見られます。気の不足の場合は舌の色が淡く引き締まり方が弱いです。心配性でいつも考え事をして後悔か取り越し苦労をして疲れています。帰脾湯(きひとう)を勧めます。血の不足の場合、舌の色は淡い紅で、表面のヌルヌルがはがれています。「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」を勧めます。陰の不足の場合は舌が濃い赤で小さくひからびたようになります。気持ちが焦りやすく怖い夢を見て寝汗をかく場合が多いです。天王補心丹(てんおうほしんたん)が勧められます。

 病気には必ず原因が隠れています。生活習慣や感情のクセなどがあります。そこを見極めて改善する必要があると思います。昼間、頭をカラにして農作業などで身体を動かし成果を認めていきましょう。夜は横になっているだけでも身体が休まるので、電気を消して目をつぶって横になっていましょう。余計なことを考えるようなら、タイマーをつけてラジオを聴くのもひとつの方法です。
 キーワードは、昼間の行動です。

■→竹冠+如 (日本語の標準パッチに入っていない字です。)


不安感

 この時期は、生活環境が変わる時期です。いままで、一日中お母さんのふところで、安心していたのに、保育園や幼稚園の知らない子供たちの中に放り込まれることになります。個人差があって、お母さんの手を振りほどいて、いろいろな遊戯に飛びついていく子供もいます。そうかと思うと、一週間たっても泣き叫んでお母さんから離れない子供もいます。どちらが良いということはなく、飛び出していく子は、迷子になりやすいという考え方もあるでしょうし、離れない子は、将来、親を大切にしてくれる可能性が高いとも考えられます。

 小学校の組み替えから、高校進学などに伴う適応不安は、程度の差はありますが、頻繁にみられるもので、むしろ自然なことに近いと思います。会社において、仕事が忙しいことよりも、人間関係の難しさの方が辛いという話しをよく聞きます。PTAの役員や地域の自治会などの役員の改選など、身の回りにはいろいろな人間関係なしには過ごして行けない部分があります。

 出来ないことを出来るようにがんばりすぎたり、生活の一部分なのに全部のように感じてしまったり、いろいろな問題点があると思います。不安感そのものは、これらの問題に対する警戒警報として機能している、と考える方法もあると思われます。生きにくい感じがあれば、まず、自分のペースにもどって、自分らしく生きるなかで、エネルギーを蓄えましょう。その上で、なにが問題点だったのか、整理していくと良いと思います。その場合、気の合う心療内科や「こころの相談室」などのカウンセラーさんが手助けをしてくれると思います。

 中国漢方では、五臓六腑の肝・心・脾・腎などに係わりがあると考えています。特に春は肝の時期で「木の枝に風が当たるとざわめく」ように不安感が出ます。イライラや左の肩こりが強ければ「抑肝散(よくかんさん)」が第一選択です。普段から先のことをあれこれ心配しすぎると、自分の心を配りすぎて心がエネルギーを無くしてしまいます。そういう場合には食欲も低下するので「帰脾湯(きひとう)」が第一選択です。眠りが浅く夢をたくさん見る場合もあります。舌の色が淡く引き締まり方が弱い場合が多いです。毎日毎日忙しく何かに追われるように生活していると、慢性の疲労から腎を傷付けます。ちょっとした物音がしても物陰に人がいても、必要以上にビックリしやすい人は腎虚です。「参馬補腎丸(じんばほじんがん)」が第一選択です。

 いずれにしても、一人で抱え込まないで、信頼できる友人にグチを聞いてもらったり、安心できる医療専門家に相談することをお勧めします。


花粉症

 Kさんは27歳の女性です。エアコンのかび臭い風を感じるととたんに何度もくしゃみが出て鼻水が止まらなくなります。くしゃみが始まるとティッシュを鼻の中に詰めなければ仕事になりません。

花粉症は全国に推定二千二百万人の患者さんがいるとされています。Kさんのようなハウスダストにも反応する人を含めると倍の患者さんがいるといっても過言ではないでしょう。現代医学のアレルギー性鼻炎に関する治療法の中心は、消炎剤か抗アレルギー剤かステロイド剤といえるでしょう。薬で症状を抑えることに治療の目的があると言ってよいでしょう。習慣性や眠気の副作用があります。

 中国医学では、症状だけを抑えるのではなく、体質のゆがみがあるから、同じ空気を吸ってもあるひとはくしゃみをし、あるひとはなんともない。その体質を改善する必要があると考えているのです。

 舌の引き締まり方が弱い場合には、体質改善が必要です。二つのケースが考えられます。一つは「気」(免疫力)が弱いケースです。風邪を引きやすく気温の変化に敏感です。運動不足の人が多く、少し歩いても汗をかいて冷えます。玉屏風散(ぎょくへいふうさん)を勧めます。日本には衛益顆粒という名前で輸入されています。もう一つは「痰湿」(水はけの悪い体質)のケースです。舌の苔が厚く付いて口臭がする場合があるので、歯ブラシなどでこする人もいます。乳製品や動物の脂の摂り過ぎの人が多いです。「六君子湯(りっくんしとう)」などを勧めます。

 症状を軽減する方法として、舌の湿り気が強く色が薄い場合肺に冷えが入っていることがあります。夏にクーラーで冷やしすぎです。「小青龍湯(しょうせいりゅうとう)」などを勧めます。腰や頭の冷えや痛みを感じる場合があります。鍛錬と休息が足りません。「麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)」を勧めます。舌の色が紅くて、目の充血や鼻づまり・のぼせがある場合、肝胆に熱がこもっている場合があります。忙しすぎてイライラしやすくなります。「辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)」を勧めます。

 症状がきびしい場合には、症状を抑える処方を使います。鼻づまりには「エンビ」、目や喉の痛みには「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」を使います。

 キーワードは、少食と運動です。


夜間頻尿

 Nさんは、63歳の女性です。夏は1回だったのが、秋を迎えたら5回になってしまいました。夜寝ているときに起きて小水に行く回数です。夜十時に寝ると一時までは寝られますが、それから一時間おきにトイレに起きます。寝た気がしないというのがNさんの悩みです。

 最近は、夜間頻尿を訴えて漢方相談においでになる患者さんが増えています。私はまず、信頼できる泌尿器科の専門医への受診をお勧めします。その上で、現代医学で対象となる疾患が無い場合や充分な効果が得られないときは、いよいよ漢方の出番です。

 ところが、漢方薬を飲む前にチェックすることはまだあります。寝る前に水をコップ一杯飲むと脳卒中を防げるといわれています。しかし、そのための夜間頻尿は、どうしたらいいのでしょうか?夏ならまだしも、脳卒中の危険性もそのほうが増えるのではないかと心配しています。

 さて、日本の漢方で第一選択は、八味地黄丸(はちみじおうがん)とされています。ところが、この処方を試みてうまくいかないケースもあるようです。それは、この処方の飲み方に問題があると思います。もともとこの処方の中には、茯苓(ぶくりょう)沢瀉(たくしゃ)という利尿薬が含まれています。私は、この八味地黄丸を昼過ぎまで服用してもらって充分利尿しておいて、夕食後には別の処方で体を温める方法をお勧めしています。この方法で良い結果が得られるケースをよくみます。その別の処方は、その人によって違います。眠りが浅い人には酸棗仁湯(さんそうにんとう)足腰の痛みのある人には疎経活血湯(そけいかっけつとう)。利尿薬を含まない、血の循環を促進して体温を上げるような働きを持っている処方を勧めます。

中国では、兎絲子丸(とししがん)が第一選択ですが日本にはありません。日本に輸入されている参茸丸(さんじょうがん)が近い処方として勧められます。

 冒頭のNさんをはじめ、冷えから頻尿になるケースでは、多くの患者さんがこの方法で寛解しています。ただし、炎症や熱症状を持っているときは、まったく違う処方を使わなければなりません。近所の信頼できる漢方に詳しい専門家に相談してください。

 キーワードは、昼間の水分補給です。


朝起きられない症候群

 今年は秋の訪れが遅く、気象庁の三ヶ月予報でも、暖冬が予想されています。それでも、だんだん寒くなってくると、朝起きて布団から出るのが辛くなってゆきます。今回は、そういった「朝起きられない症候群」の方への漢方からの提言です。

 漢方相談においでになる方に、うかがうことの中に、夕食の時間と布団に入る時間があります。夕食が六時の人は十時前後に布団に入ります。夕食が八時を回る人は布団に入るのも一時を回る人が多いようです。やはり、十二時を過ぎて寝ると翌朝七時前に起きるのは辛くなります。三十年前は十一時にテレビの主だった番組は終了するので、夜更かしの人も十一時には寝ていました。

 また最近増えてきたのが、二度寝タイプの人たちです。夕食は八時前に終わるのですが、食事が終わったとたん起きていられなくて、居所寝(いどころね)をしてしまいます。コタツなどあれば、抵抗できません。気が付くと一時を回っていて、片づけをして風呂に入ると、眠気も覚めてしまう。そういう働く女性の話をよく聞きます。

 朝起きられない人たちの多くが、舌の引き締まり方が足りなくひどい場合は歯の跡がくっきりついている「気虚(ききょ)タイプ」のケースが多いです。生命エネルギーが不足しているので、血圧も低く体温も低いことが多いです。疲れやすく、食事の後に眠くなります。眠る力も弱いので朝起きても気力が湧いて来ないのです。仕事のしすぎに注意して、朝日が当たる部屋で寝て朝日を浴びましょう。昼食前に二十分でも散歩をしましょう。麦味散(ばくみさん)が第一選択です。夜九時に寝て朝四時に起きればいいのです。

 別のケースで、舌の上に厚い苔がついている「痰湿(たんしつ)タイプ」の場合もよくみられます。からだが重だるく、口臭や体臭が気になるので、舌の苔を歯ブラシなどでこすり落とす人もいます。動物性の脂肪(肉や乳製品)の食べすぎが主な原因とされていますが、食べる時間も遅すぎます。夜八時を回ったら、味噌汁だけとかお粥だけとか(昔なら蕎麦がきを食べたり葛湯を飲んだりしましたが)だけにします。朝、お腹が空いて起きるくらいにします。毎食前に晶三仙(しょうさんせん)を舌の上で溶かして飲むと舌の苔がとれて口臭も収まります。夜の食べ物のテレビ番組を見ないようにしましょう。

キーワードは、軽い運動と空腹です。


風邪を引きにくい体質になりたい

 風邪を引きやすい人は、年中引いています。やっと治ったかと思うと、また、鼻がグズグズ、喉がイガイガ、頭がズキズキ、節々がシクシク。家事も仕事も学校も、休みがちになって困ってしまいます。

 先日、血圧が高くておいでになっていた患者さんが、「漢方薬を飲み始めて3年になるが、主治医からしょっちゅう引いていた風邪を引かなくなりましたねと、言われましたよ」と話がありました。二日後に、その患者さんの知り合いで、しょっちゅう風邪を引いている方が漢方相談にやってきました。

 風邪を引くのは、漢方でいう「脾」「肺」に問題があることが多いです。「脾」=消化器系が弱いとせっかく食べたもののエネルギーが充分吸収できずに、抵抗力につながっていきません。日ごろから歩くことを心がけて、冷たい飲食を避けて、ゆっくりよく噛んで食べて食後も休みましょう。食事の時間も一定にするように心がけます。「肺」=呼吸器系が弱いと少しの気温の変化に粘膜が炎症を起こしやすくなります。今の時期から乾布摩擦で皮膚から鍛えましょう。朝起きたら窓を開けて上半身裸になって、背骨の両脇指二本幅外側が赤くなるまで肩から腰まで擦ります。仕上げにお腹を絞るように深く息を吐くような気功もお勧めします。

 漢方では、舌の引き締まり方の弱い場合玉屏風散(ぎょくへいふうさん)が第一選択です。日本には「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」という名前で輸入されています。保険範囲では黄耆建中湯(おいぎけんちゅうとう)補中益気湯(ほちゅうえっきとう)で代用します。

 しかし、臨床の現場では「心」が原因で風邪を引くケースもあります。今置かれている立場が辛い場合、胃が痛くなるとか肩が凝るとかの症状がでる以外に、風邪を引くという表現をとって寝込むこともあります。長期にわたって不安や緊張の強すぎる環境に置かれたら、時には風邪のひとつでも引くくらいの余裕があったら良いなと思います。

より高い位置から患者さんの訴えを捉える必要のあるケースもみます。患者さんの思いを吐き出せる環境を用意して聞き出していく中で、患者さんの中で今の困難の原因と今出来ることに気付く機会を提供できればいいなと思っています。漢方では、舌の引き締まり方が弱い場合が多いので、帰脾湯(きひとう)が第一選択です。

キーワードは、マイペースです。




 今年の夏は、湿度が高くて夏の疲れがとれないひとも多いと思います。眠りが浅くて朝起きても寝た充実感がないとか、尿の勢いが弱いなどさまざまです。そんな中、に悩む患者さんもなかなか減りません。

 痔の原因は、もともとネズミのように四本足歩行から直立歩行になったことにあるといわれています。背骨が家の梁として使われていたのに頭を天辺に乗せて柱として使うようになって、胃下垂・肩こり・腰痛・難産などの不都合のひとつとして痔も現れたとされています。

 ところが、一日に30キロも歩くような羊飼いなどには、痔を持つ人が少ないとされています。筆者は、繊維質の少ない加工食品の摂り過ぎと夜更かしと運動不足などが原因とおもわれる痔になったことがあります。しかし、養生を心がけて、シャワートイレを使うようになって、痔の悩みを忘れるようになりました。しかし、羊飼いたちには、シャワートイレはありません。下半身が充実して食生活が安定していると、拭かなくても大丈夫と言うツワモノもいます。なかなかそこまでにはなれません。

 漢方から考えると、虚のタイプには次の二つが考えられます。まず、いつもだるくて内臓下垂などをともなう舌の引き締まり方の弱いタイプ。肛門の引き締まり方も弱いので、切れ痔や脱肛や痔ろうになりやすいです。補中益気湯(ほちゅうえっきとう)が第一選択です。次に、冷え症で手足の先が冷える、舌の色が薄いタイプ。冷えにより血行が悪いので、イボ痔や切れ痔になりやすいです。◆帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)が第一選択です。

 一方、邪気が気血の巡りをじゃましている、実のタイプには三つ考えられます。実のタイプはとどこおるのでイボ痔が多いです。まず、ストレスをためこみいつもイライラして気の巡りを邪魔しているタイプ。肋骨の下の張って固いです。大柴胡湯(だいさいことう)が第一選択です。二番目に、動物の脂が多過ぎて運動が足りなくて血の循環を邪魔しているタイプ。目の下にクマが出来たり唇の色や舌の色がくすんでいたり、舌の裏側の血管が怒張していることが多いです。浸膏槐角丸(しんこうかいかくがん)を勧めます。最後に、動物の脂が多く冷たい飲み物の摂り過ぎで水のよどみを作ってしまうタイプ。舌の上に厚い苔がついて浮腫みやすく、体臭や口臭で悩まされます。茵■蒿湯(いんちんこうとう)を勧めます。

 いずれにしても、直腸がんなどとの鑑別も必要なので、近くの評判のいい漢方を専門に研究している専門家に相談して薬を選んでもらってください。

◆→草冠+弓 (日本語の標準パッチに入っていない字です。)
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メタボリックシンドローム

 日本人、特に群馬県人は、気が短くて熱しやすく冷めやすいといわれます。あえて、カタカナで恐ろしげに表現することで注目されて、昼のワイドショウや夜の健康番組でさまざまな切り口で紹介されます。それでも、昨日まで身に付けた偏った栄養概念と生活習慣を、明日から変えられる力になっていかないので、いつまでたっても患者さんが減っていきません。

 メタボリックシンドロームの定義は他で詳しく述べられていますが、一言で言えば、内臓脂肪がたまって高血圧・高脂血症・高血糖などになり、さらにそこから動脈硬化を経て、心臓・脳神経・腎臓・肝臓などの多臓器不全をおこす体質傾向といえるでしょう。これまで病気を分析する「医学」が主体になり、患者さんの身体全体を考える「医療」の見方が充分確立されてこなかったので、今になって話題になりました。簡単な話です。肥り過ぎが病気の元です。

 それでは原因は何でしょう?喫煙や飲酒などは枝葉の問題です。幹は食べ過ぎと運動不足です。私はその根っこが欧米食と自動車にあると考えます。日本人が欧米食をまねして病気になり、アメリカ人のインテリ層や女優さんは日本食を食べて病気を予防しています。朝の散歩の時間を売って座りきりの仕事をして自動車を手に入れます。

 ある女性の大学の先生が、相談においでになりました。病気になる一歩手前であることをしっかり理解していたので、一日一時間の運動と日本食を指導して、三爽茶(さんそうちゃ)を勧めました。半年後には7キロ痩せて、5歳は若返った先生が笑っていました。一緒に来たアメリカ人のご主人は「ニューワイフ」といって照れていました。

 舌に白い苔が付いている人は、漢方でいう湿毒ですから二陳湯(にちんとう)をベースにします。舌に黄色い苔が付いている人は、湿熱ですから茵■蒿湯(いんちんこうとう)を勧めます。舌や唇の色が黒ずんでいる人は血の滞りとして冠元顆粒(かんげんかりゅう)を勧めます。イライラを食べたり飲んだりして解消してしまう人には、専門家によるカウンセリングと開気丸(かいきがん)が勧められます。

 キーワードは、こころのあり方と日本食です。

■→草冠+陳 (日本語の標準パッチに入っていない字です。)


夏ばて

 地球温暖化のせいか、暑さが異常のような気がします。それとも身体が弱っているのか、とにかくだるいという人が増えてきています。考えてみると世界中、仕事は必要悪というスタンスが普通のような気がします。数年前中国で昼寝の習慣をどうするかと論議がありました。スペインのシエスタが最近議論になっているようです。

 それどころか、ローマにいるいとこの話だと、7月中旬から一ヶ月以上街が機能しなくなると言います。森の湖畔で家族・知人と人生を楽しむのが普通だそうです。昼寝どころか昼食も落ち着いて食べられず、夜九時まで食事もせず働いて、休みは一斉に盆休みだけという日本は、世界から見たらまだまだエコノミックアニマルなのでしょう。夏ばてする前に休みたいものです。

 夏ばての第一の原因は、新潟大学の安保徹教授のおっしゃる自律神経の失調でしょう。いつものストレスに重ねて、エアコンの効いている部屋とそうでない場所の温度変化は大きなダメージになります。金魚の水を取り替える時は温度差を気にします。人間は急に冷たい空気を吸ったり身体に吹きつけたりしてもそのときは気持ち良く感じてしまいます。それに重ねて、最近の水飲みブームで反って消化液が薄められたりして、食欲不振になりがちです。眠りが浅くなれば、だるさに直行です。

 出来る限り扇風機のようなもので風を回すように心がけて、温度差を作らないようにします。夏は暑いのです。熱い麦茶を飲みましょう。気持ちのいい汗が出ます。昼寝の時間を工夫して作りましょう。ゴーヤミョウガのような苦い香辛料や生姜などもうまく使い、緑豆も身体の熱をとってくれます。

 漢方では、食欲を回復することを考えます。脾の気が高まれば全身の気が高まってだるさが解消されます。舌の引き締まり方が弱くて苔が白い場合香砂六君子湯を勧めます。舌の大きさは普通で苔が黄色い場合には晶三仙を勧めます。これらは軟便傾向にも効果が期待できます。急性の下痢には開気丸を、慢性の下痢には啓脾湯を勧めます。不眠には、舌が紅ければ酸棗仁湯を、舌が淡ければ帰脾湯を勧めます。

 キーワードは「昼寝」です。


心臓病発作

 長かった梅雨が明けて、暑い夏が来ました。クーラーや冷たい飲み物からどうしても離れられない今日この頃です。夏ばて防止にこってりとした食事に偏ったり、ついつい運動不足になりがちです。この時期は、真冬のものとされている狭心症や心筋梗塞の発作が起こりやすい時期であることは、案外知られていません。

 最近の若い人は、脂肪分や糖分の多い加工食品に偏りがちです。しかも、夜遅く食べることが多く、テレビを観ながら飲み込むように食べます。深夜2時に寝るのは普通です。その結果、若年層の動脈硬化が進んでいるというデータもあります。

 冷房と外気の温度差による自律神経の乱れ、暑さによる疲労・睡眠不足などによって発作の引き金がひかれる可能性が高いのです。

 中国漢方の立場から考えると、大量の汗をかくと同時に体内の気(生命エネルギー)も漏れ出てしまうと考えられています。心臓の機能が低下すれば動悸・息切れ・不整脈などが生じます。もちろん、発汗によって体液が消耗して血液が濃くなって血栓が出来やすくなります

 これまで、こういった状態の体質に「生脉散(しょうみゃくさん)」が第一選択で使われてきました。気の力を補う人参、体液を補って喉の渇きを潤す麦門冬、汗と気が漏れ出ないように引き締める五味子が含まれてきました。日本では麦味参顆粒という名前で手に入ります。やや体が冷え気味の人に勧められます。

 ところが最近はより熱しやすい体質の人が増えてきました。ストレスや過労の繰り返しによって、身体を冷ます力が足りなくなってしまって首から上ののぼせや手足のほてり、便秘や不眠に悩まされるケースが増えてきました。中国では大補陰丸という処方がありますが、日本では涼血清営顆粒という発展処方が入手できます。便秘や吹き出物から腹部膨満感から痔にも効果が期待できます。

 自分で出来る予防としては、これまで述べた原因の反対のことをする他、手足や指を良く動かす・腰湯をするなどがあります。

キーワードは、「暑いときこそ熱い麦茶」です。


夏かぜ予防

 カラオケに行くとよく歌う曲があります。井上陽水さんの「少年時代」。まだ人の手の入っていない敷島の松林の小川。キラキラした夏が懐かしいです。白いランニングに気持ちのいい汗が光り、浴槽の冷たい水に浮かんだスイカは充分冷たく甘かったです。

 最近は温暖化の影響か、緯度が下がったように高温でスコールのような雨が降り、湿度が高いです。いきおいエアコンの効いた部屋にいると、汗をかけずに体内の水分代謝が乱されます。何億年もかけて作った体内時計は夏なのに、汗をかけずに自律神経が乱れ、不眠やだるさ・食欲不振の原因にもなります。

 一方、氷を浮かべた飲み物や冷えたビールなどについ手が伸びます。胃腸が正常な機能を発揮する消化器部の体温が維持できなくて、消化能力が著しく低下します。もっと困ることは、ダラダラと摂り続ける水分や食事のときにガブガブ飲む冷たい水分の過剰摂取です。消化液が薄められて消化酵素が働けないと、食欲低下・下痢がなくても吸収能力の不足から抵抗力の低下につながっていきます。

 中国漢方では、冬の風邪と夏の風邪は、症状も違うし原因も違うので、一口に風邪といっても、お勧めする薬は違います。違いの特徴は、冬は皮膚表面の毛穴が閉じて汗をかけないので温めて汗を出して邪気をはらいます。夏はそこが弛んでしまって、汗とともに抵抗力の元の正気まで出てしまうので、強い発汗作用のある葛根湯などは慎重に使わなければなりません

 このタイプの夏風邪なら、■香正気散(かっこうしょうきさん)がお勧めです。ムカムカしてだるくて辛い症状がみるみるとれて喜ばれています。「勝湿顆粒(しょうしつかりゅう)」という名前で輸入されています。

 おなかの痛い下痢の場合に、板欄根(ばんらんこん)が勧められます。この薬草は、サーズにも新型インフルエンザにも効果が期待されている、抗ウイルス作用のある薬草です。「板欄茶」として輸入されています。

 いずれにしても、冷房を避けられる時間があったら、気持ちのいい汗をかくようにする。冷たい飲み物をダラダラ飲まない。夜は11時前に寝る。このような点に気をつけて夏を楽しく過ごしてほしいものです。キーワードは「ドリンク、氷り抜きでお願いします」です。

■→草冠+霍 (日本語の標準パッチに入っていない字です。)


膝の痛み

 梅雨に入って冷たい雨が多くなると膝の痛みに悩まされる人が多くなります。日本はアジアの東端にあって、緑が多くおいしいお米が採れますが、そのかわり、梅雨の時期は湿気で悩まされます。追い討ちをかけるように、クーラーの冷気で膝ばかりか肩や腰の痛みを感じる人も増えます。

 中国漢方では痛みの質や痛む時期や冷えや熱など具体的な症状から原因をつきとめて、体質別の処方を提案します。

 痛みの程度が強い場合、口唇や舌の色が黒ずんで舌の裏側の血管が太くなっていることがあります。動き始めが痛く少し動くと楽になります。朝起きたてはすぐに動けません。血の滞りが原因と考えられます。極度のこりや運動不足がその原因と考えられます。昔なら蛭(ひる)を患部に乗せて血を吸わせたこともあります。現在は瀉血(しゃけつ)といって皮膚を傷つけ吸引します。黒い血が抜けると楽になる場合がみられます。飲み薬では疎経活血湯(そけいかっけつとう)を勧めます。

 力が抜けるような、痛いというより力が入らない感じの場合、耳鳴りや記憶力の減退もあります。「しょうがないやねぇ・・歳のせいだから」といわれるケースです。動き始めは楽ですが少し歩くと辛くなって、少し休めば楽に動けます。夕方悪いことが多いです。五臓六腑でいう肝や腎の衰えと考えられます。温水プールで歩いたりして優しく鍛える必要があります。杜仲の木の皮や黒ゴマで薬酒を作って飲むのも効果があります。独活寄生湯(どっかつきせいとう)がお勧めできます。日本には独歩丸(どっぽがん)として輸入されています。

 重だるく、動かしにくく天気予報のように雨の前はよけい辛い場合、舌の引き締まり方が弱く歯の跡がついていたり、舌の上に白い苔が付いていたりします。体臭や口臭も気になります。お灸や電気温熱などで乾かしてあげると楽になります。水分のとりすぎに気を付けましょう。養生と思ってハトムギをご飯に一つまみ混ぜて炊いて食べるのも良いでしょう。麻杏■甘湯(まきょうよくかんとう)を勧めます。

「漢方薬だから・薬草からできているから・他の人が飲んだら効いたので、自分も長く飲めば効くはずだ」と思ってもあてはずれの薬を長く飲んでも効果は期待できません。痛みの状態や舌の色などきちんと相談をして専門の医師または薬剤師から薬はもらってほしいと思います。

■→草冠+意 (日本語の標準パッチに入っていない字です。)


がんの漢方治療について

 最近の研究の結果、がん細胞は毎日すくなくとも三千個できていて、それを本人の免疫の力でやっつけているから、がんが育たないことがわかってきました。さらに、ひとつのがん細胞が人体に影響をおよぼすようになるまでには、15年近くかかることもわかってきました。がんは生活習慣病のひとつだという説にもうなずけます。

 がん予防にしてもがん治療にしても、一番大切なことは高価な健康食品を飲むことではありません。患者さん本人が、それまでの価値観・生き方全体をひっくりかえすようなこころのありようを変化させることがなにより大切だと思います。次に病気と闘う本人の体質の改善が重要です。

 最近は、甘い飲み物を漫然と飲むケースが増えています。鉢植えの植物もそうですが、いつもいつも鉢の中の土が湿っていると根が腐ってしまいます。人間も胃袋にだらだらと水分を入れ続けると、「脾が湿によって健全な動きを失う」と中国医学では考えます。舌の上にヌルヌルした苔がつくのはその信号なので、擦り落としてもそのときに口臭が軽くなるだけなのでやめたほうがいいでしょう。

 舌に白い苔がついて、食欲が落ちているときは「六君子湯」を、めまいがするときは「半夏白朮天麻湯」を、イライラして舌の先が紅いときは「半夏瀉心湯」を勧めます。苔の色が黄色くて、便秘しているときは「茵■蒿湯」を、尿量減少しているときは「茵■五苓散」をなどを勧めます。よほど喉が渇いたとき以外は、食事の一時間前に湯飲みに一杯の白湯か番茶を飲めば充分だと考えています。食べ物を吸収する力が自己治癒力を保持する基本ですから。

 化学療法や放射線治療・外科手術によって治療することは、自分の領地に侵入した敵の軍隊にミサイルを撃ち込むようなものです。敵もやっつけますが自分の領民もたくさん傷付けることになります。自分の領民を守り、食糧を増産するような手助けはやはり漢方が良いと思います。補気薬・補腎薬の配合されている「参茸丸」が勧められます。

 現在、もっとも注目されているのが、「霊芝胞子」です。がんが限りなく増殖する酵素の働きを抑える働きによって、理論上はがんの進行を止める働きが期待できます。

キーワードは、生き直しです。

■→草冠+陳

男性不妊

 中国の病院を訪ねてみると、「呼吸器科」「消化器科」と並んで「女科」「男科」があります。男性の生殖機能については「泌尿器科」より「男性科」があっても良いような気がします。

 問題なのは、女性がその検査や治療でこころも身体も大きなダメージを受けているのに、いたわりの言葉や態度を表せられない男性が増えていることです。それどころか、不機嫌になって貝のように口を閉ざしてしまうこともあるようです。

 舌の上に厚い苔がついている場合、漢方でいう「水のよどみ」が考えられます。精子の奇形率が高いケースが見られます。陰部が湿ってかゆみや臭いが気になり、全身が重だるいことが多いです。乳製品や動物の脂の摂り過ぎや運動不足が考えられます。竜胆瀉肝湯が第一選択です。不眠があれば竹■温胆湯、めまいがあれば半夏白朮天麻湯の適応です。

 舌の色が暗い紅で、唇や舌の裏側の血管も怒張している場合、漢方でいう「血のよどみ」が考えられます。精索静脈瘤があったり、情緒によって勃起の程度が大きく変化します。青身の魚を食べましょう。日本では血府逐お湯が第一選択ですが、中国の冠心二号方の発展処方が冠元顆粒という名前で輸入されています。

 舌の色が紅く大きさが小さい場合、「陰虚」といって体内の潤い不足です。精液量が少なく精子の死亡率が高いケースがみられます。性欲は過剰気味ですが早漏の傾向があります。寝汗をかいたり足の裏がほてったりします。深呼吸を心がけましょう。日本では第一選択は六味丸ですが、より効果的なのは杞菊地黄丸です。

 舌の引き締まり方が少なく歯の跡がついている場合、「陽虚」といってエネルギー不足です。性欲が減退して運動率が低くEDの場合もあります。こう丸や腰が冷え、元気がありません。良く噛んで食事をしましょう。ヤマイモを食べましょう。日本では人参養栄湯が第一選択ですが、参茸丸がより効果的です。

 足腰に力が入らず、物忘れがはげしく、集中力がなくなってしまう場合、「腎虚」といって材料不足です。性欲が減退して精子数が少なくEDの場合もあります。鶏や豚・牛・羊などの内臓料理を食べましょう。日本には適応の処方がありませんが、中国には海馬補腎丸至宝三鞭丸があります。

■→竹冠に如

不妊

 不妊症のカップルが増えているというデータがあります。不妊というと女性だけが問題にされがちですが、半分近くは男性に原因があるともされています。今回は女性について考えます。

 現代医学的に見ると、「排卵障害」「卵管障害」「子宮内膜障害」などが主な原因とされていますが、原因不明の不妊の患者さんもすくなくありません。治療としては、タイミング指導から排卵誘発剤・ホルモン療法、さらには人工授精・体外受精などの高度医療が進められています。

 しかし、最初はホルモン剤で体が反応してくれていたのに、しだいにうまくいかなくなることも多いようです。繰り返し外部からのホルモン剤による刺激を受けているうちに、からだの反応するエネルギーが枯れてしまうのだと漢方では考えています。ホルモン療法は起爆剤でしかなく、基本的な受精能力を持つ卵子を育てる材料や受精卵が着床しやすい子宮内膜を作る材料などは、自前なのですから。

 漢方では、「気」「血」「津液」のバランス妊娠するエネルギーの元と考えています。友人や義母さんなどのささいな言葉に傷つきやすくなるので、自分のための時間をしっかりとって好きな音楽を聴いたりリラックスしたからだほぐしに使いましょう。食べ物では日本の伝統的な食事(ご飯と味噌汁・漬物)がなにより大切です。だしは化学調味料でなく、ちょっとお金と手間をかけて本物を使いたいものです。

 「気」の流れが悪い場合、月経前に胸が張ったりイライラしたりすることが多いようです。「気」の流れを整える漢方薬に「加味逍遥散」がありますが、まれに胃に負担を感じる人もいます。中国では「香蘇散」の加減方を使うことが多いですが日本では「風邪」にしか使われていないようです。中国漢方からみると病名にしばられている印象があります。

「血」の循環が悪い場合、月経痛が激しく経血に塊りがあったり黒いねばりのある血であることもあります。中国ではきゅう帰調血飲が第一選択です。七日程度の月経のあとダラダラの出血が続くときに、中国ではきゅう帰膠艾湯が第一選択ですが、日本にどのようにして間違って伝わってしまったのか、日本での適応症は「ぢ出血」とされています。ぢにも使えないことはありませんが、中国では第五の選択でしょうか?

 いずれにしても、漢方に詳しい良く話を聞いて、納得のいく説明をしてくれる専門家に相談してください。キーワードは半身浴です。


不安神経症

 春は別れと出会いの季節です。寒くて動きがにぶかった気持ちが、雪のように融けだして変化がはげしくなります。桜の花のようにウキウキ咲いたかと思うとハラハラと散ってしまいます。

 中国漢方の世界でも木の芽時の春は、五臓六腑の肝の気が活発に動く時期とされています。新入学・クラス替え・就職など、さまざまな変化があります。一般的に重大なストレスというと家族の死や職場でのトラブルを思い浮かべますが、昇格や結婚なども軽くないストレスと最近はいわれています。

 不安神経症や強迫神経症・パニック障害などは信頼のできる専門医の診断を受けましょう。

 漢方からの予防と治療の基本は、本人が本人らしいやすらぎの時間と空間を持つことだと思います。成績のためや病気や老後の家族のために、寸暇を惜しんで尽くしてしまって、自分を後回しにし過ぎる人が多いように感じます。(一方で自分のことばかりの歪んだ人が回りの人を病ませるわけですが)公園のベンチから自宅に帰れなくなる前に、もっと緑の中でぼんやりしましょう。何年もひきこもる前に、気軽くいやなことはいやと言って気持ちを伝えましょう。

 漢方では、五臓六腑の肝から心と脾に影響がおよびます。肝はイライラ、心はドキドキ・不眠、脾はクヨクヨ・胃腸の不調です。肝では第一選択は「加味逍遥散(かみしょうようさん)」です。舌の先が紅いのが特徴です。イライラのほかに不眠・便秘傾向があれば「柴胡加龍骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」を勧めます。この場合、舌の苔が黄色くて厚い場合は、大柴胡湯(だいさいことう)」を勧めます。

 心と脾では第一選択「帰脾湯(きひとう)」です。過ぎ去ってしまって変えられないことをああすべきでなかったと悔やんだり、未だ来ていない遥か彼方のことを思い悩んだりして、いま・ここを生きていないタイプです。夢が多く寝た気がしません。舌の色が淡く引き締まり方が弱いのが特徴です。一方、気分が落ち着かなく手足に汗をかいたりのぼせたりして不眠が苦になるタイプです。舌の色が紅く小さく縮んでしまっています。保険適応ではないのですが「天王補心丹(てんおうほしんたん)」を勧めます。

 ちなみに筆者のやすらぎの時間は、里山歩きと温泉めぐりです。立ち直りのきっかけとして、県こころの健康センターのホームページなどもきっかけになると思います。


更年期障害

 男性の身体は八年周期で変化し、女性は七年周期で変化すると、昔の中国の本に書かれています。十四歳前後で初経を迎え思春期に入っていく訳ですが、ニキビができたりわけもなくイライラしたり自意識過剰などにぎやかな時期です。この時期は性ホルモンの分泌が盛んになります。逆に、四十九歳前後になると卵巣機能が衰えてきます。閉経を向かえる時期が更年期となります。

 四十二歳くらいから、更年期のはしりのような症状に気が付く人がいます。生理の時に疲れが取れない・生理の量が減って周期が乱れてくる・けだるい感じでやる気がでない・頭がスッキリしなかったり首筋がこる・イライラして落ち着かない・落ち込んでゆううつになる・眠れないほか、急に火照ったかと思うと恥ずかしいほど汗が出るなどさまざまです。

 ではどんなことに気を付けたらよいのでしょうか?家庭では子どもの教育・病気がちになった両親との関係・職場での責任と仕事量の増加と人間関係などでへとへとになっていると思います。風邪をひいたときはいやでも寝込みますが、無理に無理を重ねてしまって体内のエネルギーの備蓄(漢方でいう「陰(いん)」)が少なくなってしまっていますから、休息が大切です。忙しい中にもお茶を飲んで一服入れて、疲れすぎないように気を付けましょう。そして、夜は交感神経を抑制するようなヨガや気功などのゆっくりした呼吸をして、十一時前には寝るようにしましょう。

 一方で、交感神経を興奮させるような、新鮮な体験を昼間しましょう。タイプの違う人と話してみたり、行った事の無い日帰り温泉施設などにぶらりと行ってみるのも面白いと思います。

 漢方では「血の道」という言葉もあるように、舌の色が淡かったりくすんでいる場合、血液の質を高め循環を良くする方法をとります。保険範囲では「■帰調血飲(きゅうきちょうけついん)」自費では「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」を勧めます。

 イライラや憂うつな気分で頭痛や肩こり・不眠に悩むこともあります。舌の色が淡い場合に「帰脾湯(きひとう)」舌の先だけが紅い場合に「加味逍遥散(かみしょうようさん)」舌全体が紅い場合に「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」を勧めます。

 足腰の疲れや人の言っていることが頭に入らない・物忘れがはげしいなどは、漢方では五臓六腑の腎が関わっていると考えます。「海馬補腎丸(かいばほじんがん)」「参茸丸(さんじょうがん)」がお勧めです。

 キーワードは「早寝」です。

■→草冠+弓


うつ傾向

 日本人の7人に1人がうつ傾向という報告があります。確かに、ときには行き詰った気持ちになることは誰にでもあることですが、身体症状がなかなか取れない場合うつ傾向であるといわれます。頭痛・首こり・肩こり・背中のこりに始まって、なかなか取れない疲れ、不安感・焦燥感・イライラや不眠(寝つきが悪い・眠りが浅い・途中で目が覚める・夢が多い)などに悩まされるケースもあります。

 中国漢方は、症状をむりやり取るのではありません。原因となる体質のゆがみを治してその結果、自己治癒力が発揮されて症状を克服してゆくのです。

 この時期の自然界は、生命力を体の内側に蔵する冬から、芽を出していく春に移り変わる時期です。静から動への大きな変化にさらされます。社会では、進級・新入学・就職と、人間関係の変化も大きい時期です。

 五臓六腑でいうところの「肝」は気持ちをのびやかに調整する器官と考えています。周囲の大きな変化によって、その働きがダメージを受けます。気持ちが塞がったりイライラしたり体のあちこちが凝るのはそのせいです。「肝」ゆがみ「脾」に伝わると、食欲が無くなったり胃が痛くなったり下痢・便秘・腹張・腹鳴のほか、夢が多くなります。「心」に伝わると、不安感・眠りが浅い・動悸のほか、胸の痛みなども起きる事もあります。

 まず、話をよく聞いてくれる専門医に受診するのがよいでしょう。食養生では、タマネギは身体を温める他、気持ちを楽にしてくれます。セロリは熱感を取り除いてくれるので、のぼせ・イライラ・頭痛・めまいに良いとされています。眠って気持ちの疲れを癒しましょう。

 中国漢方では、邪魔をするものがあるとき「実」といいます。肝の気の流れが邪魔されているときには、加味逍遥散(かみしょうようさん)抑肝散(よくかんさん)釣藤散(ちょうとうさん)などを勧めます。脾に伝わり水のよどみが気の流れを邪魔して喉に違和感があるときは、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)などを勧めます。不眠の場合は、温胆湯(うんたんとう)を勧めます。

 一方、不足するときには「虚」といいます。肝の陰(安定成分)が不足してのぼせるときは、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)を勧めます。肝の血(滋養成分)が不足してイライラして眠れないときは、酸棗仁湯(さんそうにんとう)を勧めます。心の血と脾の気(活動成分)が不足してクヨクヨして眠れないときは、帰脾湯(きひとう)を勧めます。心と腎の陰が不足してあせって眠れないときは、補心丹(ほしんたん)を勧めます。

 いずれにしても、「いま・ここ」を喜び感謝できるように、毎日の生活を工夫したいものです。


<花粉症根治は、「衛気」を高めて>

 花粉症の季節になりました。実は花粉が原因というよりは、車の排気ガスなどに含まれる微粒子が過敏性を高めていると言われています。さらに気密性の高まった住居でのカビやダニ、エアコンのフィルターのほこりも原因していることもわかってきました。

 中国では、「タマゴは温めるとヒナになるが、タマゴに似た石はいくら温めてもヒナにならない」という言葉があります。外側の原因は条件であって、結果を決定するのは内側の原因だという意味です。具体的には、同じ空気を吸っても、過敏な体質を持っている人はくしゃみをするけれども、過敏な体質をコントロールできている人はくしゃみが少ないということになります。

 現代人の防衛能力を低下させた原因のひとつとして、食べ過ぎ・運動不足・夜更かし・ストレスが上げられます。低カロリー・低脂肪の昔から日本で食べてきたご飯を食べましょう。夜は遅くも11時には寝るようにしましょう。

 さて、花粉の量が少ないといわれている今季ですが、シーズンの2週間前から免疫を安定させておくと症状のピークを低く抑えられることがわかってきました。そこで、玉屏風散(ぎょくへいふうさん)をしっかり服用してガードを固めましょう。日本には衛益顆粒という名前で輸入されています。

 いざ、くしゃみ・透明な鼻水が出たら「小青龍湯(しょうせいりゅうとう)」で身体を温めて症状の緩和に勉めます。目の痒み・のどの痛み・身体のだるさを伴う鼻づまりには、「鼻淵丸(びえんがん)」が自費ですがお勧めできます。保険範囲では「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」がお勧めできます。漢方に詳しい医師または薬剤師に相談して服用してください。


「食べることは命のみなもと」

 「チャングムの誓い」という番組に人気があるようです。その中では薬膳があつかわれています。「未病を治す」とは次のような概念です。健康な状態と病気の状態の中間に、病気が外側から見えなくても芽を出し始めた状態を未病と言います。大事になってしまう前に、いちはやく体質の偏りを察知し、病気の芽を摘んでしまうこと「未病を治す」言います。

 現代日本では、たくさんの情報が洪水のように押し寄せて、人が三人集まると健康についての話になります。あそこの病院にはすごい機械が入ったとか、こういう体操が良いらしいとか、こんな食べ物が身体に良いようだとかです。

 ところが、私ども漢方を専門にしているものから見ると、とても危うい印象があります。その理由は、現代科学が人体のすべてのことをわかっているかのように視聴者が錯覚しているからです。顕微鏡が発明されてから発達してきた現代医学は、解剖学的な知識を持って人体のメカニズムを解明し始めています。しかし、イギリスのスティーブン・W・ホーキング博士の言葉を借りるまでもなく「人間がわかったことなど宇宙から見たらほんのわずかでしかない」のです。人体は小宇宙と言われていますが、わずかなわかった部分にいろいろな角度から光を当てるので、「昨日コーヒーが身体に良いと聞いたのに、今日は身体に悪いと言っていた」という話になってしまうのだと思います。

 これからシリーズで、いろいろな食材の効能とレシピを紹介していこうと思いますが、大前提があります。良く噛んで食べてください。口は消化器官です。食べものの命をいただいていることに感謝して食べてください。食べ物は人間のためにあるのではありません。地球が人間を生かしてくれているのです。人間が主人で自然は人間のためにあると考えるのはとんでもない間違えです。自然は征服すべき対象ではありません。息を吸ったり草の種を食べさせていただくことは、人間が自然を取り込むのでなく、自然に融け込むことを許してもらっているのです。このような視点で、次回から食材とレシピを紹介していこうと思います。


風邪を引きやすく困っています。

Q:うちの家族は風邪を引きやすく、困っています。主人は急にのどが痛くなり熱が出て会社を休むことが一冬に2回